納入事例胃がん検診受診者の方の不利益低減のために。
X線検診はフラットパネルの時代へ。宮城県対がん協会・がん検診センター

概要

昭和35年(1960年)、日本初の間接X線装置を搭載した検診車「日立号」を導入以来、胃がん検診の先駆的存在として著名な宮城県対がん協会。今回は、その宮城県対がん協会・がん検診センター所長 加藤勝章先生に胃がん検診とX線装置の現在と将来についてお話を伺いました。

胃がん検診のセイフティネットとして、バス検診は大都市近郊や山間部などで欠かせない。

内視鏡検診の増加とともに全体的にX線検査は減少傾向です。しかし、内視鏡検診ができる施設は限られています。大都市近郊や山間部など、宮城県全体でみると、がん検診はバス検診がないと成り立ちません。

内視鏡とX線検査をうまく使い分けていくことで、X線検査は胃がん検診のセイフティネットとして非常に重要な役割を果たすと考えています。

検診車外観
検診車外観

背景胃粘膜診断で微細な病変を見逃さない。
胃部X線検査はフラットパネルの時代へ。

これまでI.I.-DRをメインに使用してきましたが、劣化に伴う画質の低下と受診者への被ばく増加の問題がありました。機器の老朽化は、特に画質面で画像のコントラストや調整の不具合などがあり、読影する立場からすると、ダイナミックレンジの狭さや白とび、黒つぶれなどが問題でした。

微細な病変について、読影で特に最近、注意が必要なのは背景胃粘膜診断です。胃炎があるのか、萎縮があるのかというところはX線診断で求められるようになってきているので、胃粘膜模様がきれいに見えてこないといけません。画質を高いレベルで維持できる装置にしたいということは急務でした。ここ数年、ピロリ菌による胃粘膜胃炎(ピロリ菌感染胃炎)とそれに伴う胃粘膜萎縮が、明らかにがんのリスクであるということがわかってきました。リスクの高い胃は、より精度を高く読影しなくてはなりませんし、リスクの低い胃であれば、受診者の不利益となる不必要な精密検査を避けることが必要です。こういう時代になった今、リスクを考えていくということは、読影の効率性を上げる意味でも、受診者に対する不利益の低減を図るという意味でも必要だと思います。

胃がんは、公的な対策が必要ながんであるということは間違いありません。ですから胃がん検診は健康維持のためには重要です。当然、内視鏡検診という新しい検診方法は有効ですが、日本国中をカバーできるものではなく地域差があるのが現状です。

X線は内視鏡と両輪として頑張らなくてはなりません。そういう意味で質の高いX線検査はこれまで以上に求められていますし、精度向上をめざしていくことが重要です。検診のモダリティ自体の精度向上とともに、効率化を図るためのリスクの層別化や、対象年齢設定、内視鏡またはX線の選択肢の広がりを持たせる必要があると思います。施設の中でしか撮ることができなかったきれいなX線画像が、山間部や離島などでも撮れるようになった。そういう意味で車載のフラットパネルの存在は非常に大きいと思います。

X線ってこんなによく見えるものなのか。
ESPACIO AVANTの導入で画質が劇的に変化した。

私以外の読影医から「X線ってこんなによく見えるものなのか」「こんなに写ってくるものなのか」との感想をよく言われます。“辺縁の歪みがない”“ダイナミックレンジが広い”“白とび・黒つぶれが少ない”“画角が広い”などフラットパネルは矩形のため、欠けが少なく細部までしっかりと見ることができます。胃部X線検査の場合、粘膜面も大事ですが、辺縁に変な不連続性が出ていないか、硬さが出ていないか、ということを見ていく必要があります。最近は変形胃も増えてきていますので、一つの画像の中にきちんと全体像が収まっているということはフラットパネルの大きなメリットです。

画質の面でも、フラットパネルはダイナミックレンジが広いので情報は残っていますし、検出器も分解能力が高く、画像処理でよく見える画像に出してもらえるようになったことは非常に重要だと思います。

受診者の方にとっても、画質の向上によって微細な病変が見つかりやすくなったということは大きなメリットだと思います。微小な早期がん発見の期待、背景胃粘膜を読み込むことによるリスクを加味した読影によって、不必要な精密検査を低減することができるようになると期待しています。

また、ESPACIO AVANTはフラットパネルになっただけでなく寝台も従来に比べて大きく改善されたと技師から好評です。まず、テーブル幅が広くなりましたので、体格の良い受診者のストレスも軽減されていますし、寝台を逆傾斜した時の安全面にも配慮されていますから、安全性が高まっていることもメリットのひとつです。

画像処理技術の進歩は目覚ましいものがあります。今後は脊椎との重なりの部分なども画像処理でさらに見えるようになってくれるといいと思います。そうすれば、今までは難しかった病変の発見もできると期待しています。

装置外観_1
装置外観_1
装置外観_2
装置外観_2

初期の導入コストは高いかもしれない。
しかし、それを凌駕するだけのメリットがある。

確かに導入時のコストはかかります。しかし、それを凌駕するだけの画質上のメリットがあります。経年劣化が少ないので、メンテナンスコストまでを考慮したときに、初期導入のコストは吸収できると思います。I.I.-DRの場合、劣化は避けられません。装置寿命が来れば交換も必要になりますので、これは非常に大きなコストになります。また経年劣化すると被ばく量も増えてきます。その点、フラットパネルなら長期間使用しても安定した画質が得られますから、経営上、安定的な運用を考えるとフラットパネルは車載装置として決して高い買い物ではないと思います。

機器の進歩とともに求められる最新の撮影技術。
今後の技師の皆さんの描出力と表現力に期待。

フラットパネルになっても撮影の基本は変わりません。ですから、技師の皆さんの基本的な撮影技術はますます問われてくると思います。透視観察を知った上での描出力や表現力といった撮影技術が求められますし、それをアピールする伝達能力も、今後の技師の皆さんには求められると思います。

病気をみつける、という気構えで異常所見があれば読影医に伝えるために、それがどういうものであるかが分かるようなきれいな写真を撮る。伝える力というのはとても重要です。

これからは内視鏡と比べられる時代になってきます。フラットパネルになって解像力が上がれば上がるほど細かなものが見えるようになっているので、それをきちんと引き出してくれるようにしていただければと思います。

撮影している技師の皆さんは透視観察によって得られた情報をたくさん持っているはずです。われわれ読影医は切り取られた8〜12枚の画像しか見ていなく、画像と画像をつなぐ間の情報は技師の皆さんしか持っていないわけですから、バリウムを飲んでからX線で観察している間すべての情報をきちんと拾って、読影補助として読影医に伝えていただければ、がんの発見精度を上げられると思いますし、無駄な精密検査も防げると思います。

技師の皆さんに求められるものや存在は非常に大きいのです。

操作卓
操作卓

スクリーニングの段階で、がんのリスクを読み取れる。
AIの活用で画像処理や診断の未来に期待。

技術的にはAIを使った画像処理、さらにはAI診断も含めた開発をしていただけると良いと思います。

例えば背景胃粘膜診断で、がんのリスクを読み取るということは読影と検診の効率化に大きく役立ちますし、今後、さまざまなエビデンスが出てくる中で、検診の間隔を決められる可能性もあります。がんのリスクの低い人には検診の間隔をあけ、リスクの高い人にはきちんと受診監修を行うこともできます。結局、スクリーニングは中間的なリスクのある人たちを追いかけ定期的に検診を受けてもらうことで、がんの早期発見につなげることが基本にあるので、それに役立つようなX線検査のあり方とAIなどを活用した選別は非常に有用だと思います。もちろん、よりコンパクトで動きやすいといった機器の開発にも期待しています。

すべての人に質の高い胃がん検診を提供する。
受診者の方の不利益低減のために。

受診者の方にとって一番の不利益は不必要な精密検査です。ですから、検査負担を減らす、偽陽性を減らすためには、良いX線撮影装置を使って、良い画質で一次スクリーニングの精度を上げて診断する必要があります。さらに今後は内視鏡検診との差別化も必要になってきますので、X線検診の精度も今まで以上のものが求められると思います。内視鏡検診を受診できないところであっても、受診者の方にとって検診の不公平にならないように、精度の高いX線検診を提供して行かないといけないと思っていますし、それが私たちの責務だと思っています。

公益財団法人 宮城県対がん協会 がん検診センター 加藤勝章 所長
公益財団法人 宮城県対がん協会
がん検診センター
加藤勝章 所長

販売名:胃部集団検診X線システム ESPACIO AVANT
医療機器認証番号:229ABBZX00014000

ESPACIO AVANT は富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。