納入事例0.3TオープンMRI装置の有用性(整形外科領域)百瀬整形外科スポーツクリニック

聞き手:久野勝之、岡田博富士フイルムヘルスケア株式会社

概要

2021年10月に長野県松本市内に、百瀬整形外科スポーツクリニックが新規開業し、当社製0.3TオープンMRI装置を導入いただきましたので、プロスポーツチームのチームドクターとして活躍されている、院長の百瀬能成先生にMRIの活用や今後の展望について取材しました。

院長 百瀬能成先生
院長 百瀬能成先生

インタビュー

クリニックの立地について教えてください。

私がチームドクターをしているプロスポーツチームの、クラブハウスとホームスタジアムの中間地点で、将来的にはクリニックの敷地内にリハビリの行える人工芝ピッチも作っていきたいという思いから、松本市内で広い敷地を確保できる場所を選びました。

ご開業にあたっての理念を教えてください。

「患者様を第一に考える、ペイシェントファースト」です。スポーツの世界には「プレーヤーズファースト」という言葉があります。コーチファーストではだめですし、メディカルファーストでもだめで、選手がプレーできるように周りのスタッフは何ができるか、どうサポートすべきか考えて行動するということです。これはプロスポーツの選手だけでなく、部活をする学生さんとか、登山やマラソンなどをやる一般の方にもあてはまることで、患者様を一番に考えていれば、自分たちがやるべきことが自然に決まってくるので、自分たちが主導で何かをするというよりは、患者様のニーズにどうやって応えていくかということを、クリニックのスタッフみんなで考えています。

クリニックの特長について教えてください。

メディカルフィットネスを併設しています。当クリニックではスポーツ整形とあわせて、地域の方々の生活習慣病を改善することをテーマのひとつにしていて、高血圧、高脂血症、糖尿病の方々が、運動処方箋を持って2階のメディカルフィットネスで運動することで、その方々の健康状態を改善できる施設になります。

クリニックの2階にはメディカルフィットネスを併設
クリニックの2階にはメディカルフィットネスを併設
シャワールームもあるメディカルフィットネス
シャワールームもあるメディカルフィットネス

ロゴマークの意味を教えてください。

クリニックのロゴマークには、名前の漢字「百」をイメージとし、百瀬整形外科スポーツクリニックの「MSC」が含まれ、さらに90度倒すと数字の「100」になります。人生100年時代で「地域の方々みんなが、健康で100歳まで自分の足で歩く」という思いが込められています。

ロゴマークには人生100年時代に100歳まで自分の足で歩いてほしいというメッセージが込められている
ロゴマークには人生100年時代に100歳まで自分の足で歩いてほしいというメッセージが込められている

スポーツ整形でオープンMRI導入の経緯

開業にあたってMRIの導入を決められた経緯を教えてください。

時代はもう令和です。痛みの場所と原因を把握して、具体的な治療方針を決めてあげないと、患者様も納得しません。例えば、高校三年生の最後の大会の前に怪我をしてしまったようなとき、安静にしていなさいと医療者側がすべてをストップするよりも、続けることによるデメリットや問題を伝えたうえで、大会に出るか出ないかの最終的な判断は本人がするというのが大切だと思います。治療者としての正しい意見を伝えるためには、MRIを用いて痛みの部位を客観的に評価して、画像を示しながら正しく説明することが大事になります。さらにスポーツをしている人にとって時間は大切で、MRIを撮るために大きな病院に行って帰ってくるというのは、移動の手間も時間もかかるので、患者様の時間を大切にするためにも、クリニックの開業当初からMRIを導入することにしました。

0.3TオープンMRI装置を選ばれた理由を教えてください。

MRI検査は医療者側が思っている以上に、検査を受ける人の負担は大きく、閉塞感や検査中の大きな音もあり、MRI検査を受けること自体を怖がっている人は少なからずいます。そういう方々のニーズに応えるのは、0.3TオープンMRI装置かと考えました。少し時間がかかるMRI検査と、検査音がうるさく閉塞感のあるMRI検査とでは、どちらが良いかを私がサポートする何名かのプロスポーツ選手に聞いたのですが、検査をするときは寝ているだけなので時間がかかっても良いが、狭くてうるさいのは嫌だという人が多く、それもオープンMRIに決断した理由でもあります。時間がかかっても、オープン型のMRIは閉塞感もなく静かで患者様の負担も少ないのは良いですし、もちろん通常診断には0.3TオープンMRI装置の画質で十分だと思います。

これまでMRIがあったからこそ分かった症例などがありましたら教えてください。

緊急性の有無の判断、軟部肉腫などの悪性腫瘍の鑑別には非常に有効だと思っています。例えば化膿性脊椎炎や深部感染症などを疑った場合には、すぐに診断がつきます。またスポーツ活動中の怪我や慢性的な痛みに対して、少し無理をさせてもよいか、スポーツを続けさせてもよいかという判断材料としても、MRIは有効です。

プロスポーツ選手のMRI検査について教えてください。

私がチームドクターとしてサポートしているサッカー競技では、筋損傷は最も発生頻度が多く、治療に時間を要するため非常にやっかいな怪我の一つです。筋損傷からの復帰は、再発リスクとの戦いでもあり、受傷後は可及的すみやかにMRIによる正確な診断をしておかなければなりません。比較的早く復帰できる1型損傷に対し、2型や3型は治療に時間を要します。レントゲンやエコー検査のみでは具体的な復帰時期を判断できず、復帰のタイミングを誤れば筋損傷を再発しさらに長期の離脱をしなければならず、プロスポーツ選手にとって大きな損失となります。逆に1型損傷と診断できれば、無駄に治療期間を費やすこともなくなります。治療方針と復帰のタイミングを選手に伝えるためにはMRI検査は必要不可欠です。

再生医療についても教えてください。

再生医療は、前にいた病院でも行っていましたが、医師に手術を勧められたけれども手術を受けたくない人や、治療に時間がかかり、難治性と言われるスポーツ障害などに適応があるので、このような方々の治療の選択肢のひとつになると考えています。あとは手術しかないというときに、手術と保存療法の間の治療を考えたときに、再生医療を提案のひとつにできると考えています。クリニックにMRIがあり、いつでも撮れるので、再生医療で行った治療が、1か月後、3か月後と時系列で治療効果がある程度評価できると期待しています。

最後になりますが今後の展望についてお聞かせください。

クリニックとしてはまだ開業したばかりですが、今後は敷地内に大きな人工芝のピッチを作る計画があります。プロスポーツ選手は病院で治療やリハビリをした後、必ずトレーナーと一緒にグラウンドに出て、トレーニングやリハビリを行い、動きを確認して復帰していきます。しかし、一般の人はそういう過程がなく、痛みや怪我が治ったらすぐに復帰することが多く、治したドクターがその人が走ったりボールを蹴ったりすることを確認できるような施設にすることで、プロ選手がやっている環境を、一般の方々や部活をやっている学生さんたちにも提供したいと考えています。またクリニック併設のサッカースクールなどを開設して、そこから怪我に負けないサッカー選手を育てていきたいと思っています。プロ選手からアマチュアまで、スポーツでハードな練習を一生懸命やっている方々が、いつでも来られるようなスポーツのかかりつけ医であり、さらには地域の方々の健康を維持できるクリニックとして、地域貢献していきたいと考えています。

リハビリ室
リハビリ室
左から、高木靖幸さん(放射線技師)、百瀬能成先生(院長)、近都恵さん(看護師)、棚田菜奈さん(看護師)
左から、高木靖幸さん(放射線技師)、百瀬能成先生(院長)、近都恵さん(看護師)、棚田菜奈さん(看護師)