納入事例AI技術を活用した超音波診断装置のノイズ除去技術の臨床的有用性~ARIETTA 850 DeepInsight~医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院

聞き手:稲垣 知美富士フイルムヘルスケア株式会社

概要

浅ノ川総合病院は医療法人社団浅ノ川グループの中核病院として地域に根ざした診療に日々取り組んでいる急性期病院です。

今回、AI技術を活用して開発した「DeepInsight技術」を搭載したARIETTA 850 DeepInsightが超音波センターにご導入されましたので、診療における活用や効果、さらには将来展望について、病院長兼超音波センター長の荒木先生ならびに元地技師、荒木技師からお話を伺いました。

病院の概略:立地・規模

浅ノ川総合病院は石川県金沢市にあり、現在の病床数は499床【一般339床、療養病床160床】です。がん診療連携拠点病院に準ずる医療機関として、専門のがんなどを中心に医療を提供する『石川県地域がん診療連携推進病院』に指定されており、厚生労働省が指定するてんかんの専門拠点病院でもあります。地域の医療機関との連携に努め、患者様が安心して治療を受けられる、質の高い医療の提供に努めています。

浅ノ川総合病院イメージキャラクター あさのちゃん
浅ノ川総合病院イメージキャラクター あさのちゃん

病院設立について:理念、特徴

病院の理念や特徴について教えてください。

荒木先生1951年の設立以来、地域密着型の高機能総合病院として、地域の皆様に信頼される医療を提供することに努めてきました。現在は、機能の異なる5つの病院と1つの老人保健施設を運営する『医療法人社団浅ノ川』の基幹病院として、総合的な急性期医療を担当するとともに、協力関係施設と有機的に連携を取りながら、医療、福祉、介護の複合的な供給体制を構築しています。

当院の特徴はミックス型の病床機能を有していることです。急性期医療に加え、地域包括ケア病棟、療養病床、さらに回復期リハビリ病棟と、各種機能を果たしており、医療の全ニーズに対応しています。また、障害者病床として呼吸器センターを有し、呼吸器が外せない重症疾患や慢性的な呼吸器管理を必要とする患者様への対応も可能です。

病院としての大きな目標は、まず地域密着型の救急医療を担うこと、次にがん診療の充実、そのために高度医療機器を備えなければいけないという意識を持っています。そして、てんかんセンター拠点施設として、小児てんかんや重度のてんかんの治療や手術ができる体制を整えることを掲げています。また、脳卒中集中治療室や北陸最大規模の透析センターを配備していることも特徴です。

荒木先生
荒木先生

診療における超音波診断装置の理想と進化

これまでの当社超音波診断装置との関わりについて教えてください。

荒木先生超音波診断装置の発売当初の腹部エコー検査はリニアプローブを用いることが主流でした。そのような中、当院ではいち早くコンベックスプローブを検査に取り入れるべく、コンベックスプローブの先駆者である富士フイルムヘルスケア株式会社(旧株式会社日立製作所)製の装置を採用しました。当時のコンベックスプローブは画像の分解能が高く、腹部検査に適した操作性も非常に気に入ったことを今でも覚えています。

次第に超音波診断装置はアナログからデジタルへと進化し、より高画質で高い診断能が求められるようになりました。当時、開発メンバーと次の技術開発に繋げるべくディスカッションを重ねた結果、ビームフォーマーのフルデジタル化を実現し、その後も画質の改良を加えることにより、アナログ機に勝るデジタル機の製品化を実現できました。フルデジタル機の製品化に携わり、使用できたことはとても貴重な経験であったと思います。

荒木先生(左)と 富士フイルムヘルスケア(株) 河野(右)
荒木先生(左)と 富士フイルムヘルスケア(株) 河野(右)

ARIETTA 850 DeepInsightをご導入されましたが、超音波診断装置に求める条件はどのようにお考えでしょうか。

荒木先生超音波診断装置に求めるのは、もちろんトップレベルの画像が描出できることです。フルデジタル化してからの画質は、どのメーカーの装置もかなり良い画像が描出できるようになりましたが、今回の装置は特に深部感度が改善していました。AI技術を活用したDeepInsight技術を使用していると聞いていますが、浅部のみならず深部までクリアに高い分解能の画像が描出できました。この改善は非常に素晴らしいと思います。

さらに必要なことは、さまざまなアプリケーションが使用できることですね。肝臓の硬さを計測するのにShear Wave Elastographyも良いですが、炎症などの影響を受けずに線維化のみを反映できるStrain Elastographyの両方を使用できることは臨床的意義が大きいです。さらに、脂肪による減衰を同時に算出できることは非常に魅力的です。

荒木先生(左)と 富士フイルムヘルスケア(株) 渡邉(右)
荒木先生(左)と 富士フイルムヘルスケア(株) 渡邉(右)

ARIETTA 850 DeepInsight の臨床的効果をどのように評価されていますか。

元地技師これまではフォーカスを観察深度に合わせて調整してきたので、当初はフルフォーカスに不安を感じました。実際にeFocusingとPoint Focusを切替えて比較すると、Point FocusではFocusの合ってない部分では画質低下を感じますが、eFocusingは浅部から深部まで均一な画質でしっかり観察できることが確認できたので、使用することに信頼が持てました。どの深度も均等な画質で観察できるため、ストレスなく全体を評価しやすいです。

1年前に別の装置で均質に見えていた肝実質が、実はやや低エコー域を含んでいたことが判明した症例がありました。また、区域性の脂肪肝の症例では、従来の装置は低エコー域と高エコー域の境界が分からず、もやっとしていました。ARIETTA 850 DeepInsightは、線でしっかり引いたように明瞭に境界を確認することができ、分解能の高さ、表現力が向上していました。

荒木技師全体的に画質、基本性能が向上していました。特に膵石や胆石の表現力で顕著に現れていました。当院では膵石破砕の件数が多く、膵石を観察する機会が多いのですが、膵石の浅部の輪郭や、破砕により割れている様子がしっかり描出されました。また、胆石では、深部の輪郭まで明瞭に観察でき、そして胆石のより高輝度な部分が階調豊かに描出され、組成の違いが想定できるほどでした。

加えて、深部の描出力に強いです。脂肪肝などの深部で超音波信号が弱くなる部分を過去画像と比較すると、しっかりと深部まで描出できていました。

荒木技師(左)と元地技師(右)
荒木技師(左)と元地技師(右)
区域性脂肪肝の症例
区域性脂肪肝の症例
浅部から深部まで均一で、エコー輝度の異なる範囲が明瞭に確認できる

リニアプローブL35(9-2MHz)の使用感を教えてください。

荒木技師胆のう炎から胆のう穿孔へ増悪した症例で、コンベックスプローブでは観察しづらい胆のう底部の穿孔部分がL35で鮮明に描出できました。破れている胆のう壁の様子と、胆汁が胆のう内腔から外へ出ている連続性まできれいに観察することができました。浅部の胆のう頸部から深部の胆のう底部までしっかりと追うことができ、感度が担保されていました。

さらに、血流の描出感度が向上し深部もノイズが少なく、血流信号をしっかり観察することができました。

元地技師腫大が顕著な虚血性腸炎でも腸管のfar wallの固有筋層までしっかり描出でき、きちんと層構造の観察ができたことにプローブの進化を感じました。これまでは、腸管観察には高周波コンベックスプローブを多用していましたが、高分解能かつ浅部から深部まで感度が保たれているため、今後はこのリニアプローブで検査をカバーできそうです。

胆のう穿孔の症例
胆のう穿孔の症例
胆のう周囲の血流確認ではノイズレスな画像でストレスなく観察可能
胆のう周囲の血流確認ではノイズレスな画像でストレスなく観察可能
超音波センターの皆さん
超音波センターの皆さん
後列左から 荒木技師、飯田技師、北川技師、中宮技師
前列左から 中町技師、針田技師、元地技師、延命技師、荒木先生

今後の期待

最後に、今後の画像診断装置に期待することを教えてください。

荒木先生今回の装置は、AI技術を活用されていると聞いていますので、AI技術の活用によるさらなる装置の進歩に期待しています。AIは機械学習すればするほど、人間の想像を超えてくるでしょう。見逃しがないようなアラート表示や、さまざまな方向からのスキャン結果を総合判断する診断支援や、病変部の詳細な観察のためにプローブ切替え等の助言があると良いのではないでしょうか。人間のアナログな視点に、AI技術が活用された診断学が加わる、いずれそんな時代になると思います。

荒木技師、元地技師多くのパラメータが備わったことにより、画質調整の幅が格段に広がりました。今後はAI技術を活用し、『プローブを当てた瞬間や身長体重の情報から、その被検者に適したパラメータで検査できる』といったプリセットをお薦めしてくれる機能が出来たらいいですね。

左から 富士フイルムヘルスケア(株)中村 、(同左)渡邊 、荒木技師、富士フイルムヘルスケア(株)河野 、(同左)稲垣 、元地技師、荒木先生
左から 富士フイルムヘルスケア(株)中村 、(同左)渡邊 、荒木技師、
富士フイルムヘルスケア(株)河野 、(同左)稲垣 、元地技師、荒木先生
AI技術のひとつである機械学習を用いて開発・設計したものです。
実装後に自動的に装置の性能・精度は変化することはありません。
取材時はマスクを着用しています

販売名:超音波診断装置 ALOKA ARIETTA 850
医療機器認証番号:228ABBZX00147000

販売名:L35 プローブ 
医療機器認証番号:302ABBZX00033000

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ALOKA ARIETTA 850 は ARIETTA 850 DeepInsight と呼称します。
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ARIETTA、DeepInsight、eFocusingは富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。
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ALOKAは日本レイテック株式会社の登録商標です。