「検査はだれもが快適に」を追求した多目的X線イメージングシステムCUREVISTA Openの開発

  • 大村 英嗣EIJI OOMURA
  • 高橋 啓子KEIKO TAKAHASHI
  • 中村 正TADASHI NAKAMURA

富士フイルムヘルスケア株式会社

X線透視撮影システムは、従来は主に消化管造影検査に使用されてきたが、現在は整形外科検査、泌尿器検査など幅広く使用されるようになった。さらに超音波内視鏡を用いたInterventional EUS(Endoscopic Ultrasonography)を含めた胆膵内視鏡治療などの低侵襲治療環境での利用も増えている。そこで、被検者を動かす必要がなく位置決めができる2WayARM機構を搭載し、汎用X線透視診断装置CUREVISTA 1) ※1のメリットを踏襲しつつ2)、現在の臨床ニーズに合わせて安全・清潔・シームレスの新しいコンセプトのもとに開発・製品化したCUREVISTA Openについて紹介する。

Key Word

  • Minimally Invasive Treatment
  • Interventional EUS
  • Low Dose
  • High Quality Image
  • Comfortable Operation

目次

1 はじめに

X線透視撮影システムは、主に胃部や注腸検査など消化管領域の検査をはじめ、医療の進歩に伴い整形外科検査、泌尿器検査、胆膵検査などの様々な検査においても使用されるのは至極当然となってきた。胆膵内視鏡治療では、近年 Interventional EUS(Endoscopic Ultrasonography) と総称される胃・十二指腸などの消化管を介して胆膵疾患のドレナージなどを行う手技が普及し、増加傾向にある3)。しかし、Interventional EUSは、専用のデバイスも少なく、確立した手技とは言えず、安全面に対するサポートが必要である4)。また、この手技の殆どは、X線透視下で行うため、被ばく低減が課題となっている。さらに、内視鏡・胆道鏡・超音波内視鏡や被検者監視カメラほか複数の機材が設置されるが、その映像信号ケーブルで医療スタッフの動線を妨げない、施術に集中できる環境が求められている。

一方、日本において2015年にJ-RIME(医療被ばく研究情報ネットワーク)がJAPAN DRLs(日本の診断参考レベル)を発表し、2020年にはCTと血管撮影装置の線量管理が法令化、X線透視診断領域での診断参考レベル改訂に伴い被ばくや線量管理に対する意識がより一層高まっている。

今回、従来のCUREVISTAを踏襲・進化させつつ、多目的検査使用はもちろんのこと、被検者と医療従事者が求める安全・清潔・シームレスの新しいコンセプトのもとに新X 線透視撮影システムCUREVISTA Openを開発した。

本稿では、CUREVISTA Openの主な特長機能について報告する。

2 主な特長

2.1 透視撮影台

CUREVISTA Openは、CUREVISTAと同じ2WayARM機構を採用した(図1)。2WayARM機構は、視野を天板縦・横方向に移動させるために、天板を動かすのではなく、映像系(X線管装置とFPD)を動かすことで、視野を縦・横に移動する機構である。これにより、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)において内視鏡を挿入している状況やInterventional EUSや経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD :Percutaneous Transhepatic Biliary Drainage)において針を穿刺している状況で、被検者を動かさずに手技が施行可能である1)

さらに天板の上端、下端どちらからでもアクセス容易なSymmetric設計の採用、FPDを天板両端9.8㎝まで近接させて、泌尿器科、呼吸器科などの検査時に天板の端で手技する術者がより楽に被検者にアプローチできる構造とした。また、装置を壁にピタッと設置できる設計としたことで、術者サイドに広いスペースを確保し、ストレッチャー・車椅子を横付けできるとともに、被検者の移動・乗り降りもし易く、さらに天板は床面から48㎝まで下げられるので乗り降りや乗せ換えが容易である。

図1 CUREVISTA Openの2WayARMと設置レイアウト例
図1 CUREVISTA Openの2WayARMと設置レイアウト例

2.2 様々な検査をサポートする機能

様々な検査、導入環境で使われているCUREVISTAのお客様から頂戴したご意見・ご要望を取り入れ、各検査での使い勝手を追求したサポート機能の特長を具体的に述べる。

(1)透視撮影台の状態表示(STATUS ILLUMINATION360)

X線管装置の正面・両側面に透視撮影台の装置状態やX線照射状況を3色のイルミネーションで視認できるステータス表示灯を搭載した (図2)。これにより、検査室のどこからでもX線照射状況が分かるため、X線中心から離れた位置に立つことで、被ばく低減につなげることができる。

図2 STATUS ILLUMINATION360
図2 STATUS ILLUMINATION360

(2) 被検者監視カメラ(SECURE CAMERA)※2

胆膵内視鏡治療では麻酔が切れてくると被検者の手や足などが動き始める。被検者の動きに気付けるように広角レンズを採用した被検者監視カメラ(SECURE CAMERA)を搭載し、操作室だけでなく検査室からも確認可能とした。さらに、この映像をVISTASCREEN ※2などの大型モニターに映すことで、被検者を見守りながら施行できる(図3)。

図3 被検者監視カメラ(SECURE CAMERA)と映像例
図3 被検者監視カメラ(SECURE CAMERA)と映像例

(3) TOUCH SCREEN(管球サイド)

TOUCH SCREENをX線可動絞り部に搭載し、絞り操作・照射野ランプ・手元照明(SECURELIGHT) ※2のON/OFF操作を可能にした(図4) 。被検者近傍で照射野ランプを点灯させて視野の確認や絞り操作ができるため、被ばく低減につなげられると考える。

図4 TOUCH SCREEN(管球サイド)
図4 TOUCH SCREEN(管球サイド)

(4) 手元照明(SECURELIGHT)

胆膵内視鏡治療の1つである経皮経肝胆道ドレナージはUS装置を用いて穿刺位置を探す。このときUS画像を見やすくするために部屋全体を暗くするため、手元が暗くなり手技に支障をきたす。そこで、視認性を向上できるように、絞り部に手元を複数のライトで照らす手元照明(SECURELIGHT)機能を搭載した(図5)。本機能は経皮経肝胆道ドレナージだけではなく、経皮的にアプローチする色々な手技にも有用になると考える。

図5 手元照明(SECURELIGHT)
図5 手元照明(SECURELIGHT)

(5) TOUCH SCREEN(テーブルサイド)※2

整形領域における機能としてEXAVISTA ※3と同様に長尺撮影(PanoramaVIEW) ※2・トモシンセシス撮影(TomoVIEW)※2を搭載した(図6)。一般的に長尺撮影を行う被検者の多くは、膝関節の症状があり、足元が不安定な方が多い5)。そこで、テーブルサイドに専用のTOUCH SCREENを備え、被検者を介助しながら操作できる優しい設計とした。

図6 TOUCH SCREEN(テーブルサイド)
図6 TOUCH SCREEN(テーブルサイド)

(6) オートポジション機能

操作室から映像系や天板のポジションをワンボタンでセッティングが可能なオートポジション機能を搭載した。任意の登録位置にポジショニングできるため、多様な検査における操作を容易にした。

(7) バーチャルコリメータ

透視のラストイメージホールド像に絞りラインを表示し、絞りの位置決め操作が可能なバーチャルコリメータを搭載した。これにより、透視を照射する前に不要な領域をカットでき、被検者への被ばく低減、術者にとっては被検者からの散乱線を低減できる。またX線可動絞りは単片絞り(4辺単独) ※2機能を搭載し、泌尿器膀胱造影では上半分のみ、整形外科の肩関節造影では左半分のみなど照射領域を関心部位のみに絞れ、体幹部への照射を防ぐ。

2.3 快適な操作の実現

画像処理のGUIを一新し、少ないクリック操作、目にやさしいカラーリングやコントラスト、直観的なアイコンなどエルゴノミクス(人間工学)デザインに基づき、ユーザビリティの向上を実現した(図7)。また、操作およびセッティングの簡易化や撮影のワークフローを効率化した。

図7 被検者登録画面(一例)
図7 被検者登録画面(一例)

2.4 X線被ばく管理

検査中の管理は、面積線量と基準空気カーマを透視画面上にはもちろんのこと、TOUCH SCREEN(管球サイド)にも表示し、さらに検査ごとに設定した閾値を超えたときに、アラームが鳴る機構を有する。胆膵内視鏡治療のような透視が長時間になるケースでは術者に注意を促すことができる。検査単位での透視・撮影各々の積算線量と積算時間を画像に表示し、検査画像と一緒にサーバーへ送信でき、読影時に意識していただけるようにした。透視撮影システムの法令化を見据え、検査結果のCSV出力を標準機能とした。また、線量管理にも対応できるようにDICOM radiation dose structured report(DICOM RDSR)(DICOM構造化レポート)※2による送信も可能とした。

2.5 多様な検査への対応

本システムを幅広い用途で対応できるように、透視撮影台にSID(Source to Image Distance)可変アーム ※2とX線管ローテーション ※2を搭載した。

①SID可変アーム

撮影時の拡大率や嚥下造影検査におけるポジショニングにおいて、検査に合わせてSIDを150/120/110㎝から選択できる (図8)。

②X線管ローテーション

天板を立位にして管球を90度に回転する機構を設け、SID可変と組み合わせることで、ベッドでの撮影を可能とした。さらに180度回転で透視室での一般撮影システムの検査(胸部撮影)が可能になる (図9)。

図8 SID可変アーム(嚥下造影検査時)
図8 SID可変アーム(嚥下造影検査時)
図9 X線管ローテーション図9 X線管ローテーション図9 X線管ローテーション
図9 X線管ローテーション

2.6 映像環境の整備

胆膵内視鏡治療は、X線透視撮影画面(左)・X線参照画面(右)に加えて、内視鏡映像・胆道鏡映像・超音波映像・電子カルテ内の画像・被検者生体モニター・被検者監視カメラなど複数のシステムを用いて高度な治療を行う。そのため、各システムのモニターに映し出された映像に目線を動かさなければならないが、CUREVISTA Openでは大型(54.6インチ)の映像統合システム(VISTASCREEN) ※2に映像を集約して表示することができる。これは、手技にあった画面構成を切り換えられるだけでなく、あらかじめ検査ごとに画面構成の登録もできる(図10)。

また、装置周辺に敷設された機材の映像信号ケーブルを天板両サイドに設置した映像信号ターミナル(VISTATERMINAL) ※2に集約し、床面はスッキリとし、整然な環境を可能にした(図11)。

図10 映像統合システム(VISTASCREEN)表示例
図10 映像統合システム(VISTASCREEN)表示例
図11 VISTATERMINAL
図11 VISTATERMINAL

2.7 画像処理(VISTABRAIN ※4

VISTABRAINではFAiCE-V ※5 NEXT STAGE ※62を進化させた透視・撮影画像処理を行う。VISTABRAINは従来からの高精細透視、KINETICS (動き追従型マルチノイズ低減処理)、TARGET(透視低ノイズ・低残像処理)、WOW(ワイヤー強調処理)、マルチDRC処理およびFRC(フレーム補間処理)に加えて、補間画像の生成に使用する各種設定を設けることで、従来よりも動きを的確に捉えることが可能となった(図12)。透視のX線照射フレームレートを下げた状態でIntelliFRAME (FRC) ※2を併用することで、1検査当たりの被ばくを低減できる6)

さらに透視スナップショット機能に加えて、透視記録はCUREVISTAにおいては300枚であったが、本システムは最大1,200枚まで保存可能とし、嚥下検査はもちろんのこと動態検査などさまざま検査で広く活用頂けるものと考える。

図12  IntelliFRAME  FRC処理概要※7
図12 IntelliFRAME FRC処理概要※7

3 結語

CUREVISTA Openは、CUREVISTAのメリットを引き継ぎながら、多目的検査に使用できるばかりではなく、安全で快適な操作性およびX線被ばく低減を意識して開発した装置である。今後もお客様からのご意見やご要望を取り込み、より安全で、かつ快適で操作性の高い装置を医療現場の皆様に提供できるように取り組んでいく。

販売名 : 汎用X線透視診断装置 CUREVISTA
医療機器認証番号 : 219ABBZX00109000
販売名 : 汎用X線透視診断装置 EXAVISTA
医療機器認証番号 : 220ABBZX00236000
販売名 : 汎用X線透視診断装置 CUREVISTA Open
医療機器認証番号 : 302ABBZX00032000

※1 CUREVISTA、※3 EXAVISTA、※4 VISTABRAIN、※5 FAiCEおよびFAiCE-V、※6 NEXT STAGE は、富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。
※2 オプション品または機能です。
※7 使用している臨床画像は、他システム(CUREVISTA)で取得したRawDataにVISTABRAINの画像処理を適用したものです。

参考文献

1)
木暮 宏史, ほか:胆膵内視鏡治療におけるCUREVISTAと新高速画像処理エンジンFAiCE-V NEXT STAGE1の有用性, MEDIX65:14-18,2016
2)
原 昭夫,ほか:IVR対応オフセットオープン方式多目的イメージングシステム“CUREVISTA”の開発,MEDIX46:58-61,2007
3)
糸井 隆夫:高品質な内視鏡手技のためのインフラ構築の実際,新医療2020年9月号:74-77,2020
4)
中井 陽介,ほか:多様で低侵襲な胆膵内視鏡診断・治療に対応した透視をめざして,MEDIX70:15-19,2019
5)
川端 卓也:EXAVISTAにおけるSLOT/STEP 長尺撮影の使用経験,映像情報Medical Vol.48 No.9:41-44,2016
6)
Noriyuki S, et al: Radiation dose reduction with frame rate conversion in X-ray fluoroscopic imaging systems with flat panel detector: basic study and clinical retrospective analysis, European Radiology 29:985–992,2019