SCENARIA Viewの最新技術紹介The New Technology of the Multi-Slice CT System SCENARIA View

  • 池田 泰隆 YASUTAKA IKEDA

富士フイルムヘルスケア株式会社

CT検査をうける患者数や3D画像処理の増加から、被ばくの低減や検査効率がCT装置に求められる中、われわれは2018年に低被ばくかつ高画質、検査効率の改善、快適な検査環境の3つを柱として開発したSCENARIA View ※1を発表した。
本論文では被検者、そして検査に携わる医療従事者の皆さまにより安心、安全で快適なCT検査をお届けするために進化した上記3つのコンセプトについて、最新技術を紹介する。

The CT system which has more low radiation dose and improved workflow is required because of the increase in the number of CT patients and 3D image processing. We introduced SCENARIA View ※1 which was developed with three concepts "Low dose and high-quality image, improved examination efficiency, and a comfortable examination environment" in2018.
In this paper, we will introduce the latest technology for the above three concepts that have evolved to provide safe, secure, and comfortable CT examinations to the patient and medical professionals involved in the examinations.

Key Word

  • Computed tomography
  • Low Dose
  • IPV
  • Full Digital HV Detector
  • SynergyDrive

目次

1 はじめに

日本では高齢化、がん罹患率の増加など、さまざまな要因により、CT検査を受ける患者数が増加している(図1)。この傾向は日本のみならず世界でも同様である(図2)。

また、2008年から2017年の間でマルチスライスCTの導入が進み、3D画像処理を行う施設数および患者数ともに増加しており、施設数は1.3倍、患者数について1.8倍に増えた(図3)。3D画像処理には膨大な画像データの再構成と解析処理が必要になるため、これらに費やす時間も増え、医療従事者の負担もより大きくなっていると推測する。

われわれはCT検査を受ける被検者およびCT検査にかかわる医療従事者など、関係するすべての方々にとってより良い装置になることを目標に開発を行っており、本論文では、ルーチン検査から心臓検査まで幅広く対応する64列128スライスCT装置SCENARIA View ※1の最新技術について紹介する。

SCENARIA Viewでは大きく分けて3つの軸で開発を進めている。1つ目は低被ばくかつ高画質であること。2つ目は検査効率を改善すること。そして最後に快適な検査環境を提供することである。次項よりこれらの取り組みについて詳しく述べる。

図1 日本におけるCT検査数の増加
図1 日本におけるCT検査数の増加
図2 各国におけるCT検査数の増加
図2 各国におけるCT検査数の増加
図3 日本における3D画像処理施設数と患者の推移
図3 日本における3D画像処理施設数と患者の推移

2 低被ばくかつ高画質

SCENARIA ViewはIntelliDOSE ※2というコンセプトでさまざまな被ばく低減技術、また線量管理技術を搭載しているが、ここでは被ばく低減、高画質を可能にする代表的な技術と今回追加された最新技術について紹介する(図4)。

まずX線発生側の技術について述べる。X線発生側では回転方向と撮影方向の両方で被ばく低減を図っており、回転方向ではX線管装置の放射口側に2種類(標準、スモール)の線量補償フィルタを搭載し、対象の大きさによって画像に寄与しない部分のX線を減衰することが可能となっている。例えば心臓検査のように限定的な領域の撮影時にスモールの線量補償フィルタを用いることで、ターゲット領域外の画像に寄与しないX線をカットし22.9%の被ばく低減が可能となる。後述する寝台横シフト機能と組み合わせることで目的部位を容易に回転中心に移動することができるため、頭部、心臓、整形領域や小児検査を中心に活用されている。また、撮影方向の被ばく低減には、Dynamic Collimatorを搭載し、スキャン速度に応じて、X線照射開始・終了時にコリメータ開口幅を制御し無効なX線をカットしている。これにより最大32%の被ばく低減を可能としている。

次に検出器側の取り組みについて紹介する。最新のSCENARIA Viewでは検出器を刷新し、フルデジタルHV Detectorを搭載した。富士フイルムヘルスケア独自のMaxiLight 技術により電気ノイズを最大40%低減*1し、さらに消費電力も45%低減*1させている。また、アナログ配線の廃止により信頼性が向上するとともに、重量も30%の軽量化*1を実現した(図5)。このようにハード面ではX線の発生側、検出側の両方で被ばくを低減する取り組みを行っている。

図4 IntelliDOSE ※3,4,5
図4 IntelliDOSE ※3,4,5
図5 フルデジタルHV Detector
図5 フルデジタルHV Detector

一方、ソフト面ではSCENARIA View発売当初より、低線量時でも画像の質感を維持し、視認性の優れた画像再構成が可能なビジュアルモデルベースの逐次近似処理IPVを搭載し、最大83%の被ばく低減を実現している。今回、新たに心臓領域に適した再構成モードを追加し、心臓CTの被ばく低減をめざした。心臓IPVでは、通常の心血管内腔を評価するLCDモードとステントや石灰化症例の観察に必要な空間分解能を重視したHDモードの2つを用意し、それぞれ目的に合った画像観察をサポートしている(図6)。

以上のように、SCEANRIA Viewではハード、ソフトの両面で被ばく低減技術を搭載しており、最新バージョンではHV Detector、心臓IPVの追加で、さらなる低被ばくかつ高画質を実現している。

*1
全身用X線CT装置SCENARIAとの比較
図6 心臓IPV
図6 心臓IPV

3 検査効率の改善

SCENARIA ViewではSynergyDriveという検査ワークフローコンセプトに基づき、CT撮影時の手順の流れを細分化し、最適化することで検査時間を大幅に削減した。操作者の負担が大きいシーンを短縮することでワークフローの向上をめざし、中でも被検者登録から撮影ではワークフローの大幅な改善を実現した(図7)。

具体的には、被検者登録では3ステップの操作で完了するQuick Entry機能、スキャノグラム撮影では撮影範囲自動設定機能AutoPose、撮影では最速60枚/秒の画像再構成エンジンを搭載した。最新のSCENARIA ViewではAutoPoseを進化させ、従来からある胸部に加え、頭部でも撮影/再構成範囲の自動設定*2が可能になった。頭部においては撮影目的に応じてOMライン(眼窩中心と外耳孔を結ぶライン)、SMライン(眼窩上縁と外耳孔中心を結ぶライン)、RBライン(眼窩下縁と外耳孔上縁を結ぶライン)の3つの基準線から選択しプロトコルに登録することができるため、頭部撮影の大幅な時間短縮が期待できるとともに、操作者の経験やスキルに依存せず一貫性のある画像が提供可能となる(図8)。

また昨今、造影検査時における被ばく低減と造影剤量低減を可能にする方法として注目されている低管電圧撮影には、管電圧の変更により複雑化する撮影条件設定を自動化する自動管電流制御機能IntelliEC Plus(CNRモード)を搭載している。CNRモードでは管電圧を変化させることによる画像ノイズやコントラストの変化を考慮した設定が可能であり、低管電圧撮影時でも被検者サイズやスキャン条件によらず同等の信号検出能になるよう線量制御が可能となる。

このようにSCENARIA Viewではルーチン検査のワークフロー改善だけでなく、造影検査においても効率化を図っている。

*2
自動算出された撮影範囲を操作者が確認、調整
図7 SynergyDrive ※6,7
図7 SynergyDrive ※6,7
図8 AutoPose(頭部設定)
図8 AutoPose(頭部設定)

4 快適な検査環境

SCENARIA Viewではガントリ開口径800mmと寝台幅475mmにより被検者への圧迫感を低減する設計がなされている。さらに広い開口径をいかし200mm寝台を横移動できるIntelliCenterと呼ばれる寝台横シフト機能により、機械的に撮影ターゲットをより回転中心に配置することができる。被検者に移動していただいたり操作者が動かしたりという行動をなくすことができ、被検者のストレス軽減とポジショニングの時間短縮が可能になるだけでなく、新型コロナウイルスのような感染症の対策として接触機会を減らすことにも有効である。また、寝台横移動操作はガントリの操作パネルからだけでなく、撮影した位置決め像上で設定し操作室から遠隔で操作することもできるため、心臓や整形領域など目視で確認できない部位であっても、高精度に回転中心に移動できる(図9 IntelliCenter)。

最後にすべてのCT装置に通じる富士フイルムヘルスケアでの撮影室内の環境づくりについて紹介する。まずCT装置は消毒用エタノールで清掃可能であり、常に清潔に保つことができる。また、発売するすべてのCT装置はガントリ、寝台、操作卓のみの3ユニット構成*3であり、さまざまな周辺機器が置かれるCT検査室のスペースを有効活用できるようにしている。そして、X線防御のため閉塞された空間になってしまうCT室内には、開放感のある空間に演出するシステムSmart Window *4を用意している(図10)。Smart Windowは高輝度プロジェクターとプロジェクションマッピング技術でCT室壁面に良好な映像を再生することができ、映像とリンクしたBGMも流すことが可能なため、被検者に快適な検査環境を提供できる。

*3
条件によりユニットが追加になる場合があります
*4
「Smart Window」は(株)総合企画の製品名称
図9 IntelliCenter
図9 IntelliCenter
図10 Smart Window
図10 Smart Window

5 まとめ

SCENARIA Viewは被検者、そして検査に携わる医療従事者の皆さまにより安心、安全で快適なCT検査をお届けするために基本設計から徹底的に見直したX線CT装置である。今回、装置開発の軸となる低被ばくかつ高画質、検査効率の改善、快適な検査環境の各テーマにおける最新技術を紹介した。これらのテーマにゴールはなく、今後も人々が笑顔で健康に暮らせる社会に貢献するため、お客さまとのコミュニケーションを通して革新的な技術開発に挑戦し続ける所存である。

販売名:全身用X線CT診断装置 SCENARIA
医療機器認証番号 221ABBZX00081000
販売名:全身用X線CT診断装置 SCENARIA View
医療機器認証番号 230ABBZX00027000

※1 SCENARIA、SCENARIA View、※2 IntelliDOSE、※3 Intelli IP、※4 IntelliEC、※5 IntelliCenter、※6 CardioConductor、※7 CardioHarmony は富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。

参考文献

1)
國分博人 ほか:低被ばくと高画質を両立した64列マルチスライスCT SCENARIA Viewの開発, MEDIX Vol.68 P51-54, 2018