術中ナビゲーションOPERADA Arrowを核とした情報統合手術の実際Clinical application of information-integrated surgery centered on OPERADA Arrow

  • 福井 敦 ATSUSHI FUKUI
  • 村垣 善浩 YOSHIHIRO MURAGAKI

東京女子医科大学 脳神経外科

東京女子医科大学 脳神経外科でのグリオーマを中心とする情報統合手術は、手術意思決定に必要な本質的データをデジタル化し、時間同期させ、そしてナビゲーションにより空間位置情報を付与することによって可能となる。今回新しい国産のナビゲーションであるOPERADA ※1 Arrowの主な特長を概説し、その空間情報で同期された情報統合手術の臨床応用について、自験例4例を示してその有用性について述べたい。

Information-integrated surgery centered on glioma at Tokyo Women's Medical University Neurosurgery is possible by digitizing the essential data necessary for surgical decision-making, synchronizing it in time, and adding spatial position information by navigation. This time, we will describe the usefulness of the clinical application of information-integrated surgery synchronized with the spatial information of OPERADA ※1 Arrow by showing four clinical surgery cases.

目次

1 はじめに

東京女子医科大学病院は2000年から伊関らの指導の下、グリオーマを中心として脳腫瘍に対して情報誘導手術を行っている。術中MRIやナビゲーションを用いた解剖学的情報、覚醒下手術や運動誘発電位を用いた機能的情報、術中病理などを用いた組織学的情報、これらの情報を術者が統合することによって摘出率を上げ、合併症リスクを低減してきた。これらの術者の意思決定を円滑にするために、デジタル化もいち早く取り入れてきた。しかしこれらの機器の情報というのは今まで独立したもので、ネットワークで情報共有されていなかった。それらをネットワークで繋げて時間と空間を同期した情報の1つとして統合した情報統合手術へ発展した。その基盤技術となるものがOPeLiNK※2といわれるネットワークである。OPeLiNKの統合表示された戦略デスクの画面には、手術顕微鏡画像、ナビゲーション画像、運動誘発電位モニタリング、腫瘍細胞のDNA量をみるフローサイトメトリー、麻酔管理に用いられる生体情報モニター、脳腫瘍の画像情報、手術室の俯瞰画像が表示されている(図1)。これらすべての情報が時間的にも空間的にも同期されたデータとして保存されていることを意味し、それらを解析することが可能になっている。空間情報の基盤となっているのが、OPERADA ※1 Arrowである。本稿ではOPERADA Arrowの特長的な機能および、その実際の臨床応用について自験例4例を用いて解説する。

図1 OPeLiNK 統合表示
図1 OPeLiNK 統合表示

2 OPERADA Arrowの特長

OPERADA Arrowの特長的な機能として、術具の軌跡表示が挙げられる。これは術野に対して、手術器具の先端が通過した空間がナビゲーション画面のMRI画像に重畳で表示されるものである。経時的に摘出がどのように進められたのかという事を、画像上にプロットされた軌跡の履歴から振り返ることが可能となる。既に摘出した部位なのか、執刀医のみならず周囲のスタッフもリアルタイムで確認できる。サーフェスレジストレーションにも大きな特長があり、OPERADA Arrowでは額や鼻根等の特徴点のあるランドマークの設定が不要であるため体位に影響されず、表面をなぞるだけでレジストレーションを行うことが可能である。頭部を4か所にエリア分けし、任意の3つのエリアにおける体表データを取得することで、頭部形状を正確に捉え高精度な位置合わせの実現を可能とし、位置精度の誤差は1.0ミリ以下である(図2)。特に、腹臥位でのナビゲーションの使用の際には、レジストレーションをとても簡単にできる。さらに、先述した術具軌跡表示機能とOPeLiNKが連携できるため、術具を使用している間、持続的にずっとこの空間情報と手術中に起きているさまざまなイベントが常に紐づけられることになる。どのタイミングにおいて何が起きていたのか、その際の意思決定はどうして行われたか、ということが、複合的に紐づけられて記録される。OPERADA Arrow はOPeLiNKとの連携によって、単なる空間情報にとどまらず、術中に得られるすべての情報を含んだ空間情報を扱う基礎となる。

図2 サーフェスレジストレーション画面
図2 サーフェスレジストレーション画面

症例1

22歳女性のDiffuse midline gliomaの症例

頭痛や嘔気で発症し、非交通性水頭症でETVを施行された。生検は施行されずMRI画像のみでフォローされていた。3年の経過で徐々に視床病変が拡大した。造影領域の出現を認めて、急速な腫瘍の増大を認め、手術を施行した。われわれはFrontal transcortical approachで手術を行った(図3)。このような深部の病変に対して、小さいOperative windowから侵入するアプローチは、術中ナビゲーションが大きな役割を果たす。ナビゲーションで腫瘍の前方がどこまであるか、後方がどこまであるかというところを術者が把握した全体像とすり合わせていく。さらに、悪性度の把握のため迅速病理を提出する際に、ナビゲーションで採取した部位の位置登録を同時に行い、病理学的情報との統合も行っている。腫瘍の辺縁をナビゲーションで確認し摘出を行った。摘出後の評価のため術中MRIを施行した。その結果、後方部分の造影部分が残存を認めた。OPERADA Arrowのログ情報を見返すと、通った軌跡を表す黄色の部分が、この後方の造影領域に関してはなかった(図4)。つまり、軌跡のログで、造影残存腫瘍が予測されていたことになる。実際、その造影病変を追加摘出して手術をしており、OPERADA Arrowログ機能がかなり有効であった症例である。特に術中MRIなどが使えない施設においては、このような摘出動作・摘出を最後に確認する時、辺縁部の腫瘍が残存の有無の評価にはこのOPERADA Arrowのログ機能がかなり有効なのではないかと考えられた。

図3 症例1 22歳 女性 Diffuse midline glioma
図3 症例1 22歳 女性 Diffuse midline glioma
図4 OPERADA Arrowの画面
図4 OPERADA Arrowの画面

症例2

41歳女性の遺伝性海綿状血管腫の症例

繰り返す出血と中脳部の症候性の出血を認め手術を行った。脳幹のアプローチはSafe entry zoneから侵入するため、解剖学的には明らかではある。しかし、腫瘍に正常構造の偏移などもあり、脳幹切開部位にQuality Assuranceを保つ意味でも必ず、ナビゲーションで確認する。本症例は上丘と下丘の間を線状に切開して血管腫の摘出を行っているが、切開前にOPERADA Arrowで位置を確認して摘出を行った(図5)。

図5 症例2 41歳 女性 遺伝性海綿状血管腫
図5 症例2 41歳 女性 遺伝性海綿状血管腫

症例3

73歳男性の右運動野神経膠腫の症例

脳表電極を置いた3番と4番のところでSEPの反転があり、その前方が運動野、後方が感覚野になっており、OPERADA Arrowにて腫瘍を紫色マーカーで囲っている(図6)。OPeLiNKの統合表示の左側の緑枠にMEPのデータが適宜更新されている(図7)。錐体路近傍の手術操作時に手を握ったり閉めたりというような自発運動とMEPを両方モニタリングしている。前方剥離時に患者の自発運動の低下を認めた。そこで一旦操作をやめたが、MEPの母指球筋の低下を5分の1まで認めた。リアルタイムに情報共有でき、前後の操作が原因であると考えられた。実際にその部位を電気刺激するとMEPが得られ、前方に錐体路があることが想定された。自発運動の回復は認められず、MEPの低下は継続したが、MEPの振幅は250μVまで回復した。術後麻痺がMMT3であったが、術翌日には完全に回復した。われわれの経験では、覚醒下との併用によって自発運動が低下した症例でMEPが50%以下の症例でも、MEPの振幅が100μV以上あれば麻痺はかなり改善する 1 )

図6 症例3 73歳の右運動野神経膠腫
図6 症例3 73歳の右運動野神経膠腫
図7 OPeLiNKの覚醒下手術でのMEP情報との統合表示
図7 OPeLiNKの覚醒下手術でのMEP情報との統合表示

症例4

44歳女性の神経膠芽腫の再発症例

初発時にもメチオニンPETの集積があり、再発時にもメチオニンの集積を認めた。再発時には造影領域とメチオニンPET集積部位に乖離があった(図8)。このような場合、われわれはメチオニンPET集積部位の摘出を行っている。手術室では、メチオニンPET画像とMRIをFusionさせることによって、はじめてメチオニンPET目標の摘出が可能となる。その場合はナビゲーション下での摘出が基本となる。PETでFusionした画像(PET Highの部分が白く投影)を摘出している(図9)。

図8 症例4 44歳 女性 DBM再発
図8 症例4 44歳 女性 DBM再発
図9 OPERADA ArrowでのメチオニンPETとの統合表示
図9 OPERADA ArrowでのメチオニンPETとの統合表示

3 今後の展望と課題

摘出目標のMRI画像に関心領域を設定して、従来の摘出率をリアルタイムで計測できることは術中MRIに依存せず、術中ナビゲーションだけで摘出率を標準化できるという強みがある。しかし、技術的にまだログが常に記録できるわけではない。またバイポーラ以外での摘出、すなわちregistrationされていない機器での摘出をどう評価するのかという課題もある。また位置情報と電気生理学的な情報を融合することによって、術後麻痺予測が改善したという予備的な結果も得ている。今後このように、さまざまなデバイスの総合的な情報の新しいモニタリングの開発も望まれる。

4 最後に

情報統合手術は手術意思決定に必要な本質的データをデジタル化し、時間同期させ、そしてOPERADA Arrowにより空間位置情報を付与することによって可能となる手術である。神経膠腫摘出において有用であり、術中MRIと運動誘発電位とフローサイトメトリーとの情報統合を行っている。他疾患への応用も期待されており、今後さらなる発展が期待される。

※1
OPERADA は富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。
※2
OPeLiNK は株式会社OPExPARKの登録商標です。

参考文献

1.
Saito T, et al: Awake craniotomy with transcortical motor evoked potential monitoring for resection of gliomas in the precentral gyrus: utility for predicting motor function. J Neurosurg 132:987-997, 2019