一般撮影室の可能性を拡げる透視付き一般撮影システム「Radnext Fluoro. Package」の開発The development of "Radnext Fluoro. Package", a general radiography system with fluoroscopy, that expands the possibilities of the general radiography rooms.

  • 前澤 一洋Takahiro Maezawa

富士フイルムヘルスケア株式会社

富士フイルムヘルスケアは、一般撮影室での「透視検査」を可能にするRadnext Fluoro. Package (ラドネクスト フルオロ パッケージ) を2021年12月より日本で販売を開始した。本商品は一般撮影室の用途の幅を拡げることを目的として開発された。本技術論文では、Radnext Fluoro. Packageが提供する価値について紹介する。

FUJIFILM Healthcare launched the Radnext Fluoro. Package, which enables “fluoroscopy exams” in general radiography rooms, in Japan in December 2021. This product was designed to expand the range of applications in general radiography rooms. This technical paper talks about the value offered by Radnext Fluoro. Package.

Key Word

  • Radiography
  • Fluoroscopy
  • High-resolution
  • Low-dose-exposure
  • Exam-efficiency

目次

1 はじめに

整形外科や内科、婦人科などを診療するクリニックでは、造影検査や透視を伴う手技を行うとき、透視撮影室の透視装置を使用することが一般的である。これらのクリニックでは、透視撮影室と一般撮影室を備えており、検査によってスタッフが部屋を行き来することは珍しくない。従来から整形外科クリニックにおける透視撮影室の使用頻度は低く、内科クリニックでも胃部造影検査は縮小傾向にある。これは、稼働率の低い透視撮影室を減らしたい一方で透視検査を完全に無くせないというクリニックの課題にもつながっており、その結果、「一般撮影装置で透視検査も行うことはできないか?」という要望が生まれていた。

この状況に対する解決策として、私たちは受像部にI.I. (Image Intensifier) を採用した透視付き一般撮影システムを2017年3月まで販売していた。その後、透視装置の受像部はI.I.からFPD (Flat Panel Detector) へと置き換えが進み、2018年以降はFPDがI.I.の市場台数比率を上回っている。

そこで私たちは、高解像度の透視用FPD (視野サイズ20cm×20cm、ピクセルサイズ200μm、フレームレート33fps) と一般撮影システム (最大32kW)を組み合わせることでより多彩な検査が行えるRadnext*1 Fluoro. Package (図1) を商品化し、2021年12月より発売した(※透視機能は臥位撮影台のみ)。本商品は、神経根ブロック・関節腔造影検査・子宮卵管造影など造影部や穿刺部の確認、関節部の動態確認や整復など、活躍するシーンはさまざまである。

さらに、従来の一般撮影システムの天井走行式・床走行式の各種X線管保持装置や臥位撮影台に透視用FPDを組み合わせることができるため、従来と同様に一般撮影室に設置することができる。本稿では、本商品の特長を紹介する。

図1 Radnext Fluoro. Packageの外観
図1 Radnext Fluoro. Packageの外観

2 高い視認性

Radnext Fluoro. Packageで採用したFPDは矩形かつ平面であるため、円形で球面のI.I.と比べて視野に歪みがない。また、濃度ムラがなく、辺縁まで均一なコントラストを有している(図2)。さらに、ダイナミックレンジ が広いため、透視による造影部や穿刺部の確認や関節部の動態確認に利用できる。

図2 I.I.とFPDの比較
図2 I.I.とFPDの比較

本商品は、高解像度な透視像を提供するためにFPDにこだわっている。FPDの性能を示すDQE(0 lp/mm)は70%以上と高く、線量が低い状態でのノイズが目立たない。透視システムとして重要な動画性能については、表示レートが33fpsと高速であるため、動きのある場合でも滑らかな透視画像を提供する。

また、画像観察するディスプレイには、透視画像や各種アイコン、メッセージの視認性が高い19インチのカラーディスプレイを採用している。直感的なGUI (Graphical User Interface)により、透視画像の左/右・上/下反転や回転、拡大、輝度調整を簡単に行える(図3)。そのほかにもDRC処理・ガンマ処理・ノイズ低減処理・先鋭化処理・自動階調処理などのデジタル画像処理技術によりユーザーの好みに応じた画質への調整が可能である。

図3 画像処理エンジンのGUI
図3 画像処理エンジンのGUI

3 ずっと低被ばく

2021年4月1日に電離放射線障害防止規則が改正された。これにより、放射線業務従事者の眼の水晶体に受ける等価線量の限度が、「5年間につき100mSvおよび1年間につき50mSvを超えないようにしなければならない」と大幅に引き下げられた。これを受けて、職業被ばくに対する関心がこれまで以上に高まっている。その中で私たちは、医療被ばく、職業被ばくの最小化・最適化に向けて長年真剣に向き合い、多角的に取り組んでいる。

一般的に、FPDではI.I.のような「経年劣化に伴う輝度の低下」が起こらない。そのためFPDを搭載したRadnext Fluoro. Packageでは、輝度の低下を補うために線量を上げる必要がなく、放射線業務従事者の職業被ばくの経年的な増加防止につながる。また、透視画像が適切な明るさになるように透視時のX線条件が自動調整されるため、過度な被ばくを回避できる。高感度なCsIを用いたFPDは、長期間安定した画質を得られるだけでなく、低被ばくの検査の維持に貢献する。

4 優れた検査効率

これまでは、透視を伴う検査を行うとき、一般撮影室から透視撮影室に移動して透視装置を使用する必要があった。しかし、Radnext Fluoro. Packageを既存の一般撮影室に導入することにより、一般撮影室で「透視検査」も行えるようになる。従来の一般撮影システムに対して追加されるユニットは、「透視用FPDユニット」と「ディスプレイカート」のみである。そのため、撮影室内のスペースを大きくとることはない。組み合わせる臥位撮影台として電動昇降タイプも選択できることから、一般撮影システムとしての使い勝手はそのままに透視機能を追加できる。さらに、当社のX線骨密度測定装置「ALPHYS*2 LF」と臥位撮影台を共用することができ、同一の臥位撮影台で骨密度測定検査も行える。これにより、一般撮影室をより幅広く活用できる(図4)。

図4 追加ユニット
図4 追加ユニット

また、FPDの視野は矩形視野のため、I.I.のように透視のたびに絞りに円形マスクを取り付ける手間がなく、撮影検査から透視検査にスムーズに移行できる。加えて、20cm×20cmの歪みやムラがない視野で高画質な透視画像を得られるため、検査効率が向上する。

5 結語

稼働率が低い透視撮影室を有効活用する施策として、私たちは透視検査もできる一般撮影システムRadnext Fluoro. Packageを開発した。従来の一般撮影システムと比較して増えるユニットは、「透視用FPDユニット」と「ディスプレイカート」のみのため、スペース効率にも優れている。さらに、私たちのX線骨密度測定装置ALPHYS LFを設置することにより、ひとつの部屋で透視、撮影、そして骨密度測定検査を実施できる。今後もお客さまの声を真摯に受け止め、新しい価値を提供できる商品の開発に取り組んでいきたい。

販売名:X線透視撮影装置Radnext Fluoro. Package
医療機器認証番号:303ABBZX00064000

販売名:X線骨密度測定装置 ALPHYS LF
医療機器認証番号:230AABZX00024000

*1
Radnext、*2 ALPHYSは、富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。