CT装置SCENARIA View Plusの開発Development of CT System “SCENARIA View Plus”

  • 國分 博人Hiroto Kokubun
  • 佐藤 誠Makoto Sato
  • 小原 亮太Ryota Kohara
  • 村上 賀章Noriaki Murakami
  • 鈴木 悠太Yuta Suzuki
  • 鉄村 悠介Yusuke Tetsumura

富士フイルムヘルスケア株式会社

2018年、われわれは64列128スライスのマルチスライスCTシステム「SCENARIA View (シナリア ビュー)」*1を販売開始した。本製品は、低被ばくと高画質の両立、検査効率の大幅な改善をコンセプトの柱としており、AI技術*2を活用して開発した画像処理機能IPV*3、検査効率向上技術SynergyDrive*4を搭載している。
今回、従来のコンセプトをそのままに、心臓CT撮影時に生じる心臓の動き(拍動)による画像のブレを低減する技術Cardio StillShot*5(オプション)と画像再構成スピードを向上させるFOCUS Engine*6を新規搭載した「SCENARIA View Plus」を開発したので紹介する。

In 2018 we launched the SCENARIA View*1, a 64-row and 128-slice CT system. The product is based on the concept of combining low dose with high image quality and greatly improving CT scan efficiency, and is equipped with IPV*3, an image processing function developed using AI technology, and SynergyDrive, a technology that improves CT scan efficiency.
In this report, we present new product “SCENARIA View Plus” with new features “Cardio StillShot*5”, which reduces image blurring caused by cardiac motion during cardiac CT imaging, and “FOCUS Engine*6” to improve image reconstruction speed, while keeping the current product concepts.

Key Word

  • Cardio StillShot
  • Focus Engine
  • IPV
  • SynergyDrive

目次

1 はじめに

日本における死因の第2位は心疾患であり全体の15%を占めている。また、心疾患の罹患年齢は下降傾向で、後遺症患者の増加など社会的な影響も大きくなっている1)。このような状況下において心臓CT検査は心臓カテーテル検査と比較して侵襲性の低い冠動脈検査として注目されており、さまざまな医療機関において、低線量、高画質、検査ワークフローの効率化などが求められている2)

今回発売する「SCENARIA View Plus」は、2018年に発売した64列128スライスCTシステム「SCENARIA View」の低被ばくと高画質のコンセプトはそのままに、心臓の拍動によって生じる画像のブレを低減する技術Cardio StillShot*5と画像処理速度を向上させるFOCUS Engine*6を新たに搭載し、さらなる高画質画像の提供、心臓検査の効率化に貢献するマルチスライスCTシステムである(図1)。

図1 SCENARIA View Plus外観
図1 SCENARIA View Plus外観

2 「SCENARIA View Plus」の特長

2.1 心臓CT撮影時の心拍動による画像のブレを低減

心臓CT撮影後、画像処理時に心臓の動きを推定し、心拍動によって冠動脈など心臓部分に発生する画像のブレを低減する技術Cardio StillShotを搭載した。これにより高い時間分解能を実現し、常に動いている心臓の撮影において、ブレの少ない画像を提供することを可能とした。

2.2 低線量での撮影時にも高画質な画像を提供

AI技術を活用して開発した画像処理機能IPVを搭載したことにより、従来の一般的な画像処理技術FBP(Filtered Back Projection)を使用した場合と比較して被ばく最大83%*7、画像ノイズ最大90%の削減を実現した。さらなる低被ばくかつ高画質な画像の提供を可能とした。

2.3 高速な画像再構成を実現

高速GPU(Graphics Processing Unit)を採用した演算ユニットFOCUS Engineを搭載した。このFOCUS Engineにより、従来のCPUを搭載した演算ユニットと比較して、画像処理機能IPVを最大2倍で実行可能とした。また大規模の演算が必要となるCardio StillShotを実行可能としている。

2.4 検査効率向上

「SCENARIA View Plus」は従来装置に引き続き、検査効率向上技術SynergyDriveを搭載している。被検者の入室から退出までの検査工程を細分化し、被検者の撮影ポジション設定、被検者情報登録、撮影範囲や撮影条件設定、画像転送、3D画像解析処理など操作者に負担のかかるシーンを自動*8・高速化することで、検査効率を向上させ、検査時間を削減する。

3 Cardio StillShot

3.1 原理

Cardio StillShotでは、心電図同期撮影により収集されるRawデータから、動き評価ループにて、心臓全体の動く方向と量(動きベクトルフィールド)を4次元的に算出・推定する(図2)。動きベクトルフィールドを用いて、Rawデータから動き補正画像再構成処理を実施する。これらの処理によって、Cardio StillShotは、時間分解能の向上に寄与する。

図2 Cardio StillShotの原理
図2 Cardio StillShotの原理

3.2 時間分解能の向上

Cardio StillShotは、高い時間分解能を実現する能力を有しており(実効時間分解能は0.35秒スキャンで最高28ms)、高心拍のように、冠動脈の動きの速い場合でも、拍動によるブレを低減することが可能である。図3に、冠動脈を模擬した動態ファントムにCardio StillShotを適用した例を示す。Cardio StillShotを適用していない場合は、動態ファントムの動きが速くなる(心拍数bpmが上がる)につれ、円形の形状が崩れ、ブーメラン状の偽像が強くなっているが、Cardio StillShotを適用した場合では、静止状態とほぼ同じ円形の形状を保っていることが分かる。Cardio StillShotの高い時間分解能により、高心拍や心拍数変動の大きい場合でも撮影失敗の頻度を低くすることができる。

図3 Cardio StillShotの冠動脈ファントムへの適用例(上段が適用なし、下段が適用あり)
図3 Cardio StillShotの冠動脈ファントムへの適用例
(上段が適用なし、下段が適用あり)

3.3 臨床例

Cardio StillShotの臨床適用例を図4に示す。従来の心電図同期画像再構成(FBP)と比較して、Cardio StillShotでは、心臓の拍動による画像のブレが低減している。

FBP

図4 Cardio StillShotの臨床適用例 FBP

Cardio StillShot

図4 Cardio StillShotの臨床適用例 Cardio StillShot
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 FBP
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 Cardio StillShot
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 FBP
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 Cardio StillShot
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 FBP
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 Cardio StillShot
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 FBP
図4 Cardio StillShotの臨床適用例 Cardio StillShot

図4 Cardio StillShotの臨床適用例

4 まとめ

SCENARIA Viewの開発当初から、われわれはさまざまな機能に対して徹底的な改良を行ってきた。今回開発したSCENARIA View “Plus”でも、さらなる進化をめざし、心臓CT撮影の新たな技術領域にチャレンジしている。これまで心臓撮影機能は、スキャン速度の向上、検出器の多列化など、ハード面での改善が主流であったが、今回紹介したCardio StillShotは、ソフト面に視点をシフトして新規開発した技術である。ソフト面でのアプローチのメリットとしては、装置としてのグレードに依存せず、広くその価値を提供できることにあり、Cardio StillShotは、変革を続けるCT技術の未来に対しても、その価値を継続的に提供し続けることができる技術であると考えている。

Cardio StillShotは、被写体の動きによる偽像を低減する画像再構成演算機能であり、われわれは心臓以外の部位への適用もめざしている。この技術を基盤としてより新しい価値を被検者、ならびにユーザーの方々へ、継続的にお届けする所存である。

*1 SCENARIA View、SCENARIA、*5 StillShot、*6 FOCUS Engineは富士フイルムヘルスケア株式会社の登録商標です。
 
*2
AI技術のひとつであるMachine Learningを用いて開発・設計したものです。導入後に自動的に装置の性能・精度は変化することはありません。
*3
IPVはIterative Progressive reconstruction with Visual modeling の略称です。AI技術のひとつであるMachine Learningを活用して開発した機能です。導入後に自動的に装置の性能・精度が変化することはありません。
*4
SynergyDriveはワークフロー向上技術の総称です。AI技術のひとつであるMachine Learningを活用して開発した機能を含みます。導入後に自動的に装置の性能・精度が変化することはありません。
*7
モデルオブザーバ法を用いてMITA CT IQファントム(CCT189、Phantom Laboratory社製)に対して、IPVの強度レベルStrong5を使用して0.625mm厚のスライス厚でテストして得られた結果です。検査対象、体格、解剖学的位置、および検査内容によっては、得られる効果が小さくなる場合があります。
*8
自動算出された撮影範囲を操作者が確認、調整します。
仕様は予告なく変更されることがあります。

販売名: 全身用X線CT診断装置 SCENARIA View
医療機器認証番号: 230ABBZX00027000

販売名: 全身用X線CT診断装置 SCENARIA
医療機器認証番号: 221ABBZX00081000

参考文献

1.
令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況
2.
Abbara et al., SCCT guidelines for the performance and acquisition of coronary computed tomographic angiography: A report of the Society of Cardiovascular Computed Tomography Guidelines Committee Endorsed by the North American Society for Cardiovascular Imaging (NASCI). J Cardiovasc Computed Tomography. Nov-Dec 2016;10(6):435-449.

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