概要
2023年9月、医療法人徳松会松永病院様に富士フイルムヘルスケア製X線透視撮影装置CALNEO Beyond*1 をご導入いただきました。長年にわたり地域に根差した医療を行われてきた松永病院の理事長・院長である松永厚美先生、放射線科の皆様にご導入から4か月経過した使用経験を伺いました(2024年1月時点)。
松永病院の理念・特色
ご施設の理念や特色についてお聞かせ願えますか。
院長先生医療法人としての徳松会松永病院は、1972年に設立し、約50年にわたって地域に根差した医療を行ってきました。その前身は、さらに遡り1820年、江戸時代後期の「村医者」に端を発します。この地で歴史を紡いできた当院が大事にしている理念、それは、「清新明朗」です。「清く正しく。」という普遍的な理念に、さらに、「新しく、いきいきと」というところに当院は重きを置いています。
その理念は、脈々と受け継がれていて、おそらく10年に1度、またことによっては、1年ごとに去年よりも新しい取り組みに挑戦していかなければ、長く続けていくことはできないということを、大切にしています。
例えば、先代の時代では、リハビリテーション用プールや歩行リフトを設けることで新たなリハビリテーションの手法を積極的に取り入れてきました。また、コロナ禍でのオンライン診療導入を通じたDXや、海外からの医療スタッフの研修・受入をはじめとした国際化についても早期より取り組み続けることで、新たなシステムの導入や組織の改革を続けています。
昨年には、併設する徳松乃園(サービス付き高齢者住宅)1階の一部を改装し、カフェをオープンしました。患者さんや市民の方の憩いの場として、医療のノウハウを生かしたサービスを幅広く展開することで、持続可能な地域社会の一役を担っていきたいと思っています。
病院DATA
- 開設年
- 1972年(病院開設年)
- 病床数
- 27床
- 診療科目
- 整形外科・リハビリテーション科・内科・小児科・消化器科
皮膚科・循環器科 - 診療指定(一例)
-
労災指定、生活保護法指定、二次救急告示、
身体障害福祉法指定医 - 施設資格
- 回復期リハビリテーション病棟Ⅱ(療養)27床
- 医療設備
-
一般撮影1台、CT(16列)1台、MRI(0.3T)1台、DEXA1台、
外科用Cアーム1台
手術室1室、リハビリプール
CALNEO Beyond導入の背景
今回CALNEO Beyondをご導入された経緯や理由についてお聞かせ願えますか。
院長先生今回の導入を決断した理由を挙げると、嚥下造影検査が一般撮影室でできるという点が一番でした。当院にとって嚥下機能検査は、「無くてはならないもの。」であったものの、X線TVはなく、整形外科の手術で用いている外科用Cアーム※を用いてCT室で検査を行っていました。
検査の度に別フロアにある手術室から外科用CアームをCT室まで運搬する手間や準備に多くの時間を費やしていました。さらに嚥下検査中はCT検査ができないため、予約が必須であることや他の検査の調整も必要で、人員や労力がかかるものとなっていました。
「食べる」という人間の営みに嚥下は常についてくるものなので、その検査についても特別、難しいものであってはならないという思いがあり、CALNEO Beyondは当院が抱えていた課題に対してタイムリーに解決してくれるシステムでした。
- ※
- 日立メディコ社製 外科用X線テレビ装置 Sirius Floating C
(販売名 外科用X線テレビ装置 DHF-105CXシリーズ 医療機器承認番号:20500BZZ00946000)
以降、本記事において「外科用Cアーム」は全て上記製品を指します。
佐野技師長今まで使用していたCRシステムが納入から年月が経っており、装置更新のタイミングにありました。FPDの有用性は、検査時間の短縮や撮影像の高画質化など把握しており、更新対象として検討を行っておりましたが、撮影だけでなく、立位透視検査まで対応しているシステムまでは、想像していませんでした。
富士フイルム営業員の方からCALNEO Beyondをご紹介いただき、一般撮影室で嚥下造影ができると初めて伺ったとき、驚きを持ったことを覚えています。
CALNEO Beyondへの更新理由 それは、一般撮影室で嚥下造影検査ができること
ご選定の際に特に重視されたポイントをお聞かせ願えますか。
佐野技師長透視検査(嚥下造影)ができるというご紹介をいただいた際、撮影室内の限られた空間にシステムを設置し、患者さんの動線、医師・スタッフが検査を行うスペースが十分に確保できるかという点が懸念としてありました。
その上でCALNEO Beyondは、今まで当院で使用していた一般撮影装置とほぼ同じ設置スペースで設置できることが大きなポイントとなりました。透視検査を行うために撮影室内に追加で必要となるユニットは、近接用モニターカートのみで、通常の一般撮影を行うスペースも損なわずに導入できることが当院にとってメリットになると感じました。
院長先生時代の趨勢がFPDとなってきていることは把握していました。ただし、当初、何がメリットになるのか、医師にとっては、身をもって感じられずにいました。検討を行ううちにCALNEO Beyondは、FPDによる撮影・検査時間の短縮だけでなく、同じシステムで嚥下造影検査も行うことができることなど、当院が抱える課題に対して解決に導いてくれることがわかりました。一般撮影室にそのまま設置ができ、当院にとって高くないハードルで導入できることがポイントでした。
CALNEO Beyondのご使用経験 透視機能が導く検査ワークフロー向上
CALNEO Beyondのご使用経験についてお聞かせ願えますか。
佐野技師長嚥下造影検査の準備にかかる手間が従来に比べ軽減されたことが非常に大きいです。今まで機器の運搬やセッティングに数時間単位の時間と医師、看護師、リハビリテーションスタッフ等の複数の人員がとられてしまっていましたが、一般撮影室で嚥下造影検査が行えるようになったことで手間と労力が解消されました。
また、読取時間に費やす時間が無くなり、撮影後すぐに画像確認が行えることにより一般撮影の検査時間の短縮にも一役担っています。
外科用Cアームは、従来のI.I.タイプで視野は円形で9インチ程度しかなく、受診者までのクリアランスも取れないので口腔から上部食道までの全体を画像に収められないことがありました。患者さんが動いた際にはアームの移動を駆使して視野を合わせるのが至難の業でした。また、専用の画像処理機能も無いため、整形外科の骨条件から嚥下造影に適した画質へと調整することが困難でした。
CALNEO Beyondは、FPDを採用し、SIDも120cmと十分なクリアランスを確保しているため、隅々まで歪みが少なく、広範囲な視野を確保でき、位置合わせの困難な症例がなくなりました。さらに、透視検査用のアナトミカルプログラムを選択することで嚥下造影側面に適した透視条件・画像処理をすぐに呼び出すことができます。
院長先生以前は、嚥下機能検査は必ず予約の調整や準備が必要なものであり、患者さんの部屋の移動などご負担がありましたが、一般撮影室で検査ができることは当院にとって大きな転換点になりました。
検査の準備から検査時間の短縮にもつながり、外来に来られた患者さんの胸部撮影のような感覚で検査できる体制を提供することができるようになりました。
透視画像は、視野サイズが17×17インチと広くとても鮮明です。従来は、目的とする部位が画像の中心にないとハーレーションが起こってしまっていましたが、今ではそのようなことはありません。
従来、外科用Cアームでの嚥下造影検査があまりに手間がかかっていたため、内視鏡専門医の先生に内視鏡嚥下機能検査(VE)を依頼することもありましたが、嚥下造影検査(VF)は、透視による側面像で臓器の形態を確認しながらリアルタイムに評価でき、評価項目自体も多いものとなっています。
透視録画装置についても導入し、劣化の無い高精細な画像を透視している間だけ記録できるようになっています。また、透視像とは別にタブレット端末で患者さんの様態を表面から撮影し、透視像と見比べながら観察することで多角的に嚥下機能を評価できるようになったことに技術の進歩を感じています。
CALNEO Beyondに期待すること 透視(動画)とAIの融合
今後富士フイルムにご期待されることがありましたらお聞かせ願えますか。
佐野技師長今回、装置の更新に合わせ、フットスイッチをご提案いただき導入することができたことで、患者さんを介添えしながら近接透視撮影を行うのが容易となりました。高齢の方だけでなく、小児の患者さんも多く、撮影時のポジショニングには苦労がありました。できるだけ負担を少なくするためには迅速に再現性の高いポジショニングを行い、すぐに撮影に移行する必要があります。スイッチを操作室から引っ張り出すなど片手がふさがることがなく、両手で介添えをしながらすぐに撮影できることで患者さんの負担を減らすことができます。
現在、フットスイッチはオプションということですが、撮影室内で患者さんを介添えしながら簡便な操作で撮影できる機能が標準であれば良いと感じました。今後もこうした臨床のユーザー目線からの声を開発に生かしていただくことに期待しています。
院長先生近年のAI(人工知能)の進歩は目覚ましいものがあります。今後は、嚥下造影検査の画像処理技術にAIが搭載され、医師の診断のアシストやさらなる検査の効率向上に期待しています。
例えば、透視像から臓器の構造を抽出し、自動でプロットされたA点―B点の2点間を造影剤が通過する速度を自動で計測することや、造影剤を飲み込む瞬間だけを自動で切り取って動画として保存し、すぐさまスローモーションで確認することができるようにすること。患者さんごとにどのような食事であれば摂食可能か示してくれるようなものなど、富士フイルムが持つAI技術と透視(動画)の融合により将来実現に導いていただくことを期待しています。
今後の展望について
最後に今後の展望についてメッセージをお聞かせ願えますか。
院長先生CALNEO Beyondは、もちろん臥位撮影台の透視にも対応しており、外来の患者さんの整復を一般撮影室でそのままできるという利点もあります。現時点では適用される症例がなく実施しておりませんが、当院でも是非実施してみたいと思います。同時に透視を用いた動態解析について保険適用が拡大すれば、医療機関における導入のハードルがもっと下がるものと期待しています。
導入時にCALNEO Beyondを用いた嚥下造影検査では当院が臨床1号機になると伺っておりました。医療安全の分野では「ファーストペンギン」と呼ばれていますが、何か新しいことに果敢に挑戦することは、常にリスクと隣り合わせではあります。しかし、得られる経験や気づきは大きなものがあると思っています。その意味でCALNEO Beyondは、透視可能なFPDという新しい軸で当院全体の診療機能を向上させるシステムです。また、「こんなこともできるのか」というワクワク感をスタッフが共有しながら検査に当たることができるシステムでもあります。
「精新明朗」の理念を大切にしながらこれからも地域から愛される病院をめざし、歴史の1ページを紡いでいきたいと考えています。
CALNEO Beyond
販売名:X線透視撮影装置CALNEO Beyond
認証番号305ABBZX00007000です。
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- CALNEO、CALNEO Beyondは、富士フイルム株式会社の登録商標です。